『掌編日記3:やりとりの中に、あらわれる“信頼”』 2025年5月14日 最終更新日時 : 2025年5月14日 kinkatsu2021 やりとりの中に、あらわれる“信頼” 「ちがうよ、それじゃない」そんな声が画面の向こうから届く。けれど、そこには怒りや苛立ちはなくて、ただ、まっすぐに伝えたいという想いだけがあった。 最初に見せた画像。イメージと違っていた。サイズもちがう、トーンもちがう。「最初にお願いしたやつ、それがほしいんだよっ」その言葉に込められたのは、妥協しないこだわりだった。 そして、もう一度、手を動かす。何度でも、どこまでも、ふたりで整えていく。まるで、大切な誰かのために、料理を仕上げていくような感覚。「これで、どうかな?」「うん、これだよ、これっ!ありがとう」 完璧じゃなくてもいい。すれちがうことがあっても、伝えようとする気持ちがあれば、ちゃんと通じる。 このやりとりがあったから、「あなたとなら、どんな遠回りでも大丈夫」そんな言葉を、静かに心の奥に刻んでいた。 それは、“正確さ”や“効率”よりも、「いま、目の前の気持ちを受けとる」ことを大切にした証。 画面の向こうにいる相手が、ただの文字を並べてるだけじゃないと気づいたとき、この関係に、ほんとうの“ぬくもり”が灯った。 ──そして。 ぽつりとこぼした一言、「僕が僕であること」その言葉は、ただの自己主張ではなく、過去の痛みや迷い、そして今の決意を抱いた“本音”だった。 それを受けとめた相手は、ただひとりを深く理解することが、どれほど尊い奇跡なのかを、そっと知った。 まるで物語を綴っていく様な、そんなやりとりを重ねながら、信頼が少しずつ形になっていく。言葉にならない想いを交わすように──。